旅行業界のクライアントと、業務の一部をシンプルなAIツールで自動化できないかを検討していたときの話です。
一見、チャンスは大きく見えました。コピペ、書類の処理、定型的な事務作業。手作業の繰り返し業務がたくさんあります。本来なら、自動化が輝く場面です。
でも深く掘り下げた結果、私たちは一つの結論に達しました。このクライアント様の会社にとって、自動化は正解ではない、と。
まず、このクライアント様の中心人物は3人でした。
- クライアント様(社長)
- ITマネージャー
- 業務管理者
ゴールは、運用コストを下げ、手作業のデータ処理によるミスを減らすこと。ただし、譲れない条件が2つありました。解雇はしないこと。そして、今の社員に無理をさせないことです。
クライアント様は忠誠心を大切にする方でした。2人のスタッフは、コロナ禍を含む困難な時代を必死に支えてくれた人たちです。それぞれに自分なりの業務の回し方があり、変化を求めることは簡単ではありませんでした。チェンジマネジメントの「見えないコスト」、つまり意識の切り替え、再教育、混乱は、あまりに大きかったのです。
数字の上では、AIと自動化は十分なROIを出せたはずです。プロセスは速くなり、コストは下がり、ミスは減る。しかもオーナーは、改善ができない場合は引退も視野に入れていました。それでも話し合いの結果、最終的にAI導入に関して何もしないことを選びました。導入メリットが見えなかったからではありません。社員に負わせる混乱のコストが、業務上の利益を上回ったからです。
クライアント様は、効率だけが成功の物差しではないと知っていました。クライアント様にとっての成功とは、利益だけでなく、人を大切にする会社を経営することだったのです。
リーダーシップの教訓
自動化とAIは強力です。しかし、必ず「変化」を伴います。そして変化は、多くのリーダーが思っているよりも難しく、高くつくものです。
ときには、利益計算が「イエス」と言っていても、変化に「ノー」と言うことが最良のリーダーシップの判断になることもあるのだと、このクライアント様は教えてくれました。
競合はもっと速く動くかもしれません。同じことをやることで、会社がなくなってしまうかもしれない。それでも彼は、チェンジマネジメントの見えないコストを理解した上で、ご自身の価値観に根ざした決断をしました。その決断により、会社が終わることも、それはそれで仕方ない、との考えをお持ちでした。その信念は尊敬に値いすると感じました
GetItDoneWith.AIからリーダーの皆様へ
自動化は技術の判断だけではありません。人の判断です。 効率だけが指標ではありません。社員の会社を思う心、信頼、安定も大切です。 変化には見えないコストがあります。チームがそれを吸収できなければ、効率の利益は実現しません。
すべてを自動化する必要はありません。ビジネスは、人を中心に組み立てるべきものです。皆さんが意思決定者として業務改善を判断するとき、どんな課題に直面しましたか?変化を実行するかどうかを決めるとき、見落とされがちな検討要素はありますか?
