先日、経営している 株式会社アノサAIの契約書とポリシーのレビューをお願いするため、法律事務所を探していたときのことです。
問い合わせた事務所は、大体どこも進め方が同じでした。まず30分の有料または無料の面談、そのあと詳細な見積もり、そして委任契約書のサイン。今回はスポットでいくつかの契約書の雛形を見てもらいたいだけで、顧問契約を結びたいわけではなかったので、プロセスに時間と手間がかかることに少し不満を感じていました。
そんな中で、「AIを活用している」と打ち出している事務所を見つけました。「弁護士がAIを使うことでレビューの時間と手間が減るため、お客様に負担いただくコストが通常の事務所よりも低いです」という説明をいただきました。
やっと探していたものに出会えた!と嬉しくなりました。
私自身AIをかなり使うので、たとえば今まで手動で5時間かけていた成果物が今は2時間でできるのでその分だけ請求します、と言われたら、これは良いAI活用方法だな、と思いますよね。そう思って、喜んで契約しようとしました。
ただ、念のため規約を読むと、思っていたのとは全く違うものでした。
弊社が買おうとしていたもの
規約を読み進めるうちに、弊社が購入しようとしていたのは「弁護士による書類のレビュー」ではなく、「弁護士の知見を利用した、AIを活用したプラットフォームへのアクセス」であることに気づきました。
書類の最終レビューには人間の弁護士も関わるそうですが、通常存在するべきである「弁護士と顧客の委任関係」は成立せず、契約上の業務範囲と責任の所在が、法務サービスを事務所にお願いするときに想定するものとは違っていたのです。
これが実務で何を意味するかというと、もし納品されたレビューに抜けがあって、それが原因で弊社が何かトラブルに巻き込まれたとしても、その事務所は成果物の責任を引き受けてくれない、ということです。ソフトウェアが行ったレビューの背後に、弁護士と顧客の契約関係が存在しないからです。
もちろん弊社が求めていたのは、「契約書をレビューできるAIツール」ではありません。すでに持っているツールでも、かなりのレベルのドキュメントは作成できます。そうではなくて、求めていたのは「専門的な判断と最終責任を引き受けてくれる、有資格の弁護士」です。
この2つは、同じように見えても、まったく違うサービスです。
おかしいと思ったのは、AI活用そのものではない
正直に言うと、騙された、とすら感じました。
でも、それはその会社がAIを活用していたからではありません。引っかかったのは、「AIを活用した法務サービス」という言葉の響きと、規約の実際の中身とのずれでした。
「AIを使うので、同じサービスをより効率的に提供できます」と「AIを使うので、買っていただくのは責任の所在が異なる別種のサービスです」は、まったく違う話ですよね。
どちらのビジネスモデルにも存在意義はあると思います。ただ、買う側がどちらを買っているのかを分かっている必要がありますし、その情報が規約の奥に隠れているべきではありません。
署名の前に、必ず確認すべき2つのこと
「AIウォッシング」といわれる、AIという言葉をつけることで本当はない価値を作り出すような行為は、いま色々なところで起きています。しかも、分かりやすい詐欺の顔はしていません。「AI」をつけたことによって、そのサービスに特別な価値がついたり、または同じものが安く手に入るかのような錯覚に陥るのはよくあることだと思います。
気をつけないと、実はAIのラベルがついただけで過大評価された、欲していないサービスまたは商品を購入することになってしまうかもしれません。
今回の件も含め学んだ結果、私は必ず以下を確認するようにしています。
1. どんな成果物またはサービスを届けてもらうためにお金を払うのか。
2. 成果物またはサービスを届けたあと、その会社は何に対して責任を負うのか。
AIがあってもなくても確認するのは大切ですが、AIという言葉が飛び交う中、更なる注意をしていくことはとても大切だと思います。
AIを使うことは悪いことじゃない
誤解されたくないのですが、先日こちらの記事を書いたように、私はAIを活用している取引先を歓迎しています。アノサAIとGetItDoneWith.AIをやっている身として、効率化できるところは徹底的に効率化したい。探すのは楽ではありませんが、AIを使わない事務所を選ぶのは私にとっては最終手段です。
ただ、その効率化が、新しい価値を生むのではなく、もともと価値を生んでいた部分をそっと抜くことで成り立っていないかどうか、対価を払おうとしているものが従来と別のものではないかをしっかり確認することが、AI時代に必要とされるスキルなのではと考えます。
AIというラベルに騙されず、自分が何を買おうとしているのか、そこにどんな責任が紐づいているのかをしっかり確認することが、これまで以上に大事になっていくと考えています。
みなさんは、「AI活用」と書かれたサービスを選ぶとき、何を確認していますか。似たような経験をされた方がいたら、ぜひ聞かせてください。

